「十角館の殺人」は綾辻行人さんのデビュー作です。
綾辻行人さんと言えば、所謂「新本格派」と言われるミステリィのムーブメントを作り出した作家として有名です。
ミステリィ界では「綾辻以前、綾辻以後」という言葉が生まれた程です。
そんな方のデビュー作である以上、大きな話題になったかというと、実はそんなことはないのです。
そもそもこの作品はミステリィの新人賞である江戸川乱歩賞に応募したものの、2次選考で落選してしまいました。
その頃は松本清張を始めとした「社会派」と言われるリアリティを追及したタイプの推理小説が主流でした。
綾辻行人さんが得意とする所謂「名探偵」が犯人を暴くタイプの作品は、あまり評価されない時代だったのです。
そんな中、少数派でありながら奮闘していた島田荘司さんにの目に留まり、落選したはずの綾辻行人さんは「十角館の殺人」でデビューすることとなるのです。
この作品は、孤島にある十角館に遊びに来た大学生が殺人事件に巻き込まれてしまう話です。
彼らは有名な海外のミステリィ作家の名前をニックネームとしており、物語中、殆ど本名は出てきておりません。
ミステリィ好きであれば、ニヤリとしてしまう様な名前やエピソードが多数出てきます。
同時進行で本土に残った者達で過去に起きた十角館での事件を追っていくのですが、最後の最後でどんでん返しが待っているのです。
綾辻作品と言えば、最後のどんでん返しが魅力の一つであることは多くのファンが同意してくれるとは思いますが、その切れ味はデビュー作でも変わりありません。