多重人格探偵サイコの感想

容赦のない残酷描写で話題となり、私の住む県では有害図書指定されている「多重人格探偵サイコ」の12~13巻を読みました。
最新刊とかではなく、既に完結した作品の読んでなかった分を読んだところです。
話の内容は、この漫画に通底した、得も言われぬ、独特な「哀愁」「切なさ」が強く前面に出てきているように感じました。
派手な残酷描写がとにかく喧伝されるこの作品ですが、そこは作品の一部として、話が進むに連れ増えてきた登場人物が織りなす、扱われる題材は確かに「残酷」ですが、「残酷」かつ、ドラマティックな情景を見ていくとそこに強く出ているのは「切ない」としか言いようのない何かのような気がします。
話が進むにつれ中心として扱われる人物も変わっていったこの漫画、初期はただ出てくる猟奇殺人犯を話しの中心人物たちが捕まえて、そこの背景に「ガクソ」という組織が絡んでいて……という話でしたが、話が進むにつれ、それらの背景にあった巨大な陰謀が姿を現し始め、当初の主人公はほぼ話から退場し、味方から敵へと立場を移したキャラクターもおり、移り変わって話の主軸になった登場人物たちが直面するのは「圧倒的なスケールで襲い来る無常な現実」です。
そこに相対して、それでもなおあがこうとする登場人物たちの姿が、最近の、「多重人格探偵サイコ」の話の中では、読んでいて心を打たれるように思います。「パルプフィクション」とかみたいな「残酷でクールなフィクション」のようでいて、そことは明確に違う何かを描写している作品だと私は思います。